新社会人のみなさんへ#2

大学で学生支援をしていたとき「社会に出る」というのはどういうことですか?と学生さんから相談を受けたことがあります。

とても頭の良い学生で,思慮深く,全体を見渡すことができている学生さんでしたから,その質問の意味に少し戸惑ったのを覚えています。

仕事をするということへの向き合い方,学校という枠組みではないコミュニティでの立ち振る舞い,あるいは広い大海に向けて出港する心構え,「社会に出る」というのはいろんな意味があるでしょう。

社会と言っても,属するコミュニティの枠が増えるだけと考えることはできるかもしれません。元々大きなコミュニティに自分はいるんです。あんまり普段は意識しないし,もっと身近なコミュニティを強く意識しているために見えづらいだけで。

そういう意味では社会にはもう出ている。
ずっと前から社会の一員。

僕は自然でいいと思うのです。
みなさんが,自分らしく目標をもって邁進していける環境というのは,みなさんにとってとっても都合が良い,偶然にも必要なものがキレイにそろっている環境のことを指しません。

そんな環境があるはずがないからですね。

柔軟にカタチを変えて,適応していくこと。
自分らしさを変えるということではありません。自在に変幻して,受け入れること,自分が一番大事なことを価値判断の基軸として選択していくことで,自分自身の影響力を少しずつ広げていく。
これが大切です。

あの時,僕もまだ若かったのでこんな話はできなかったと思います。学生さんのあの問いは,

どのように社会のルールに適応していけばいいんだろうか,果たして自分にできるだろうか。

そういう「不安」「心配」,こういうものの現れだったんだろうなと今では思います。

社会の仕組み,社会に出るということ,ルール,そういうのは自ずとみえてくるはずですし,いずれにしてもこれらは我々を必ずしも縛ったり,不安にさせたり,危害を加えてくるものとは限りませんから,柔軟に受け入れ,受け止め,必要に応じて変化させていくものでしょう。


大丈夫。
どんなひとでも,僕だって,みんなのお父さん,お母さんも,自然に社会に出ています。最初に言ったとおり,みんなだって実はもう社会に出ているんです。これまで通りです。

ひとつだけ。
メンターを見つけておくといいと思います

これから先いろんなことで悩むでしょうし,不安を感じるでしょう。人生を先に進んでいるひとは世の中にはたくさんいて,そういうひとたちの中には,みなさんの心配を理解し,助けてくれるひともたくさんいます。
なので,そういうひとにメンターとして時々話を聴いてもらえると良いと思います。

僕もメンターとしての特別な訓練をしてきています。
これまでそうして相談を受けたり,悩みを話してくれたりしてきたひとたちがたくさんいて,困った時の駆け込み寺のように,時々,若い人たちが連絡をくれます。
僕はメンターとしての活動が好きです。
彼らの話を聴くことで,自分にとっても人生の勉強になりますし,彼らが僕の言葉を聞いてさらにひとつ深い思考へ入っていけることが何よりうれしいのです。

話を聴いてもらっただけで悩みが解決すると。そんなことはありません。悩みは自分で解決していくものですが,しかし,参考にはなるかもしれませんし,僕はその支援をします。

人生を謳歌するにはメンターを持ちなさい。

《次回#3につづく》