キャリアコンサルティングと称して,自分が経験をしていない仕事のことまでアドバイスをしているひとたちがいて,やったこともないのにアドバイスだなんてできるわけがない。怪しいから私はそんなの信じない。
という内容のコラムを目にしまして,なるほど確かにーと思ったので,ここで振り返りのつもりで改めてキャリアコンサルティングについて考えてみたいと思います。
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少し長くなるので分割します。
お付き合いいただけましたら幸いに存じます。
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仕事に関する悩みを抱えているひとへ
職場や仕事,職業にまつわるモヤモヤや他には言えない悩みを抱えている方ってたくさんいると思います。
端的に言えば,キャリアコンサルティングとはそういう悩みを持つ人たちからの相談を受けることです。
でも,誰かに相談したいとは思うんだけれどカウンセリングってちょっと大げさだし,だからと言って占いに頼るってわけにもいかないよねー。
キャリアコンサルティングってなんかよくわかんないけど,人生相談を受けてくれるもの?解消してくれるの?
友だちに話し聴いてもらうのと何がちがうのかしら。
そんなことを考えている方にとっては,本稿は僕が行っているキャリアコンサルティングってこういうものですよ,という説明にもなります。
興味がでたら一度試しご相談ください。
僕のキャリアコンサルティング
さて,最初にこれは個人の考えであることを強調しておきます。
いろんなキャリアコンサルタントの方がいらっしゃいますので,いろんな解釈があるという前提で読んでください。
その点で,もしもみなさんがキャリアコンサルティングを受けてみようかなと思ったら,自分にあったキャリアコンサルタントの方を探してみるとよいと思います。
これがそのための一助になるとうれしいです。
(情報開示がなければ,どんなキャリコンさんなのかわからないところに問題はあるのだけれど。)
キャリアコンサルティングとは
職業能力開発促進法第二条第5項にキャリアコンサルティングの定義が書かれています。
この法律において「キャリアコンサルティング」とは、労働者の職業の選択、職業生活設計又 は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいう。
労働者というのは,会社で仕事をしているひとたちだけを指すわけではありません。ここでは雇用されているひとと求職しているひと,両者を指します。
でもまぁ細かいことは抜きにして,社会人全般を指していると考えてもらってOKです(職能法的にどうかという話はさておき,キャリアという言葉は職業生活だけをさしませんから)。
たとえば専業主婦(夫)やフリーター,いわゆるニートや引きこもって仕事してないひと,(たぶん)パチプロとか含めて考えてOKだろうと僕は考えています。
そして,キャリアコンサルティングは
彼らの
職業の選択
職業生活設計
職業能力の開発と向上
について,アドバイスや指導を含めた相談にのること。
ということになります。
職業生活設計というのは,職業について働くにあたって目的とか目標に向かって,やりがいや生きがいを感じながら,すなわち人生の一部として仕事と向き合うために必要なことを考え,実行し,必要な知識や技能を身につけていくためのプランのことを言っています。
「キャリア」とは、過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すものです。「職業生涯」や「職務経歴」などと訳されます
厚労省の定義ではキャリアは職業の経歴を言っているようで,でもこれだとものすごく狭い範囲をさすことになって,「履歴書」の範疇におさまってしまいそうなので,元来キャリアという単語が人生の一部に関わることだと考えれば,これは職業生活だけを言っているのではなくて,人生100年時代においてその生涯を通して得る経験や体験の連続を指していて,だとすればもうそれは人生そのものと言ってもよいのではないかと僕は思っています(これをライフキャリアと言うことがあります)。
さらに言えば,人生設計はあるとき一度きりプランニングすればそれでOKというものでなく,人生の大事なイベントが起きたり,大きなパラダイム転換が起きたり,予想もしていなかったことが起きて,その都度,改訂を余儀なくされるものです。それどころか,特に何事もなくても,なんとなく予定や行き先が変わることなんてそんなに珍しいことでもないですよね。
だからこそその度,いいえ,もっと定期的に振り返りをして現況(今の自分)と将来(在りたい自分)を比較してそのギャップを埋めるための再計画を都度行っていくことが大切なのだと言えます。
したがってキャリアコンサルティングは,職業を介し,キャリア形成を考えるという視点で人生そのものを支援するための定期健康診断的なものでありたいと僕は考えています。
カウンセリングとコンサルティング。
ところで
人生相談というと,どうもカウンセリングという言葉が先に浮かんでしまいますが,キャリアコンサルタントが行うのはその名のとおりコンサルティングです。
ではカウンセラーとコンサルタントって何が違うんでしょうか。
これは「助言及び指導」を含むか,含まないかの違いなのかなと考えています。
コンサルタントは良くも悪くも,現況分析し,状況を改善するための方策を練り,クライエントに提案します。
改善案ですね。
外部から訪れた黒船のように,強制的,指示的な外圧によって,専門的な視点からパラダイムシフトを起こすようなものです。
一方でカウンセラーはクライエントの話をひたすらに聴き,共感し,クライエントはその対話の中で無意識に自分自身と向き合う言わば内圧からのアプローチと言えます。
まぁ
役割というか,機能の違いなので,どちらがよくてどちら悪いみたいな話ではもちろんないのですけれど,キャリアコンサルティングという名前はさておいて,どんな面談にしたいのか?は,ひとそれぞれ理想型のようなものはあります(たぶん)。
それで,僕が考えるキャリアコンサルティングがコンサルなのかカウンセリングなのかと言うと,理想は定期健診としてのキャリアコンサルティングですからこれは両者のいいとこ取りということになるでしょうか。
個人的にはもしかしたら職能法の精神から外れるかもしれませんが,助言と指導はできる限り避けたいと思っています。当該職業においてはクライエント自身が専門家であり,キャリアコンサルタントはクライエントを超える知識を持ち合わせていないからです。
キャリアコンサルタントがもっている専門知識ですべきことは情報提供という意味で「ガイダンス」と「サジェスチョン(※示唆とかほのめかすニュアンス)」だろうと考えています。
指示的でない関わり方で現況を聴き取ることで,クライエントは自身との対話ができるでしょう。
ちょっとそのあたりをもう少し詳しく考えてみましょう。
相談者に寄り添うということ
さて,それでは「相談にのる」ということについて考えてみます。
「相談にのる」って,いったいどういうことを言うのでしょうか。
話を聴くこと。
アドバイスをすること。
情報提供すること。
どれもそうなんでしょう。
キャリアコンサルティングでは僕は相談にのっているというよりも,定期健康診断的に振り返りをしてもらって現況を確認してもらうことと,目指す自分とのギャップを考えてもらうことで,これから何をしたらいいのか?について検討してもらう時間だと考えています。
僕がキャリアコンサルタントの定期健康診断的な面談を受けることが重要だと考えているのは以下のような理由です。そしてそれがそのまま僕のキャリアコンサルティングで重視していることでもあります。
すなわち
キャリアコンサルタントが
- 第3者の視点であること
- 専門的な観点から意図的に関わっていること
- 多様なキャリア相談を受けた経験をふまえていること
という3点(※内容は後述します)において,プロフェッショナルの知見を持ちつつクライエントに寄り添ってくれるからです。
そしてまたこの3点がそのまま,キャリアコンサルタントによる相談が「友だちに相談する」とは異なり,自分自身のキャリアを振り返るのにより有効に働く要因にもなるというわけですね。
しかし間違えて欲しくないのは
このことが「友だちに相談する」ことが悪いとか,キャリアコンサルタントに相談することが,他の方法よりも高いレベルで問題解決に繋がるとか,そういう意味ではないことです。
キャリアコンサルタントはクライエントにしっかりと寄り添い,クライエントの内省に伴走して深いレベルまで共に降りていくことはしますが,そして時に,ただ優しく頷くだけでなくクライエントの問題点についてほんのりと示唆したりしますが,しかしそれで劇的な変化が起こるかどうかはわかりません。
そうです。
キャリアコンサルティングを受けても「問題は容易に解決しない」のです。
悩みを解決するという観点でキャリアコンサルティングを考えるとすれば,なんだか「指針」を与えてくれて,それに従えばたちどころに「解決」することを想像してしまうかもしれません。
もし本当にそれで解決するなら,それはあなたの人生ではありません。
僕らが持つ自由に道を選ぶ権利を他人に委ねてしまったら,もはや他人の書いた脚本で生きる俳優みたいなものです。
だから,このコンサルティングはそもそも悩みを解決するための仕組みではなく,悩みを正確に認識し,一歩踏み込んでいくための勇気を得るプロセスと言ったほうがいいかもしれません。
そして,それこそが「寄り添う」ということなんだろうと僕は今,まさに今考えています(これは次の瞬間別の定義に行き着く可能性を示唆しています!)。
僕のキャリアコンサルティングはコンサルでありながら,コーチングのようにクライエントの可能性を信じ,共に考え,共に悩み,共に解決に向かって歩き出すパートナーシップ型のコンサルティングなのです。
※キャリアコンサルタントによっては,「助言及び指導」をキャリアコンサルタントの仕事と考えているひとは少なくありませんし,事実,職業能力開発促進法にはキャリアコンサルティングの定義として明記されていますから,この助言と指導をどう解釈するのかの違いかもしれませんね。
僕はいずれかが正しいのだと考えず,留保することも選択のひとつと考えています。念のため申し添え。
つまり,僕が強く言いたいのは,
クライエントは問題を他人に解決してもらってはいけないってことです。
それを委ねてはいけないのだと,僕は今のところ考えているってことです。
で,どうするかというと
そのひと固有の問題を解決できるのは,そのひとだけだという見地でもって寄り添い付き合い,伴走して,クライエント自身が解決の糸口を見つけるまで隣に立って勇気付けるパートナーで在るのです。
話を聴きながら,ところどころその考え不思議だなーとか,なんでそんなふうに極端に考えるんだろうなーとか,本当にそれだけなのかなーとか,その言葉はちょっと極端じゃないかなーとか,その言葉頻発するなーとか,表情と言葉が食い違うなーとか,そういうポイントを押さえて問いかけてみたりするわけですが…。
長くなったのでいったん分割します。
続く。
次回目次
第3者視点であること
専門的な視点で意図的に関わること
多様なキャリアの相談を受けているという経験
についてちょっとだけ詳しく書きます。