「仕事の悩みの8割は人間関係」は本当か

「仕事の悩みの8割は人間関係」は本当か

仕事の悩みのほとんどは人間関係からきている,という話を聞いたことがありますか。

キャリアコンサルタントとして仕事の悩みをうかがっていると,表面的に相談される悩み(主訴)は様々でも,話を深めていくと「どうもさっきから問題の対象が特定の誰かを指しているような気がするなぁ」と感じることは少なくありません。

すべての悩みは人間関係か

先日お話した方です。

やってみたいことがあって転職を考えているんです。

と話し始めたその女性も,話をしていく間に「今所属しているチームのリーダーがワンマンで,彼女が一方的に決めたチーム方針が自分の考えとあわない」という内容が形を変えて何度も出てきました。

一方で,今の仕事が嫌いなわけでもなさそうで,現職の良いところ,好きなところをたずねると湯水のようにあふれてきます。

たとえばあなたがチームリーダーになるとしたら,どんなふうに今の仕事を発展させていきたいですか?

と水を向けると,それはもう活き活きと話をするのでした。

結局面談の中で彼女は,転職についてはいったん保留にして,一度チームのみんなとチームの方針について話あってみてもいいかなと考え始めました。

単発の相談でしたので,そのあと彼女がどのような行動をとったのかはわかりませんが,僕の見立てでは,本当の問題はチーム内のコミュニケーションの不足,とりわけチームリーダーとの信頼不足と考えています。

こんなふうに,人間関係は見せ方を変えて,それは本人も気が付かない無意識の領域で多様な問題を生んでいるんですね。

かのアレフレッド・アドラー博士は,「すべての悩みは対人関係の悩みである」と言っています。

対人関係論

僕たちはひとりで生きていません。
様々な人間関係の中で生きていて,ひとときも「人間関係」を抜きにして考えることも,行動することも,そして悩むこともありません。

社会の最小構成は「私とあなた」です。
その小さな社会ができたとき,初めて問題が生まれます。

それで僕たちはその問題を解消するためにルールをつくったり,約束したりしますし,自分以外のひととの関係を基準にして,自分の信念をつくったり,評価や価値観をつくったりもします。

表面上,給料が安いことに腹を立てているとしても,何かと比較して給料が安いと感じ,たとえば社長に対して給料を増やしたいという目的をもって腹を立てるのです。たったひとりの世界では,給料が高いか安いかもわからないし,腹を立てる相手がいなければ,目的も持てず行動もしないでしょう。

このような「人と人が繋がるネットワークのなかで僕たちは生きていて,僕らは常に誰かに対して,何かしらの目的をもって,行動している」という考え方をアドラー心理学では「対人関係論」といって最も基礎的な理論のひとつとしています。

もし世界に自分ひとりしかいないとすれば社会は形成されず,人間関係も生まれません。比較するものがなければ自分の考えは唯一のものであって,正しさとか,価値があるとかないとか,そういう疑問が生まれることはないでしょう。

行動や感情も人間関係の中においてこそ生まれるものです。
うれしかったり,悲しかったり,辛かったりも,自分一人で感じることはきっとできないでしょう。

世界に自分がひとりで寂しいという気持ちでさえ,元々ひとりであって,そうでない状況との比較がなければ,友だちという存在がなく,友だちがそばにいてくれないという概念すらなければ,それで寂しい気持ちを感じることはたぶんないんでしょうね。

悩みとなればなおさらです。

会社に対して腹を立てること。
社会問題に対して憤りを感じること。
チームリーダーではなくて,チームの方針に違和感を覚えること。

これらにも対象と目的をもった行動があるだろうと考えます。
決してひとりで,誰に対するでもなく,行動することはありません。

このように

「誰に対して,どのような目的をもって行われた行動なのか」を考えると,仕事の悩みどころか,すべての悩みが人間関係に起因すると言えるかもしれません

一は全,全は一。
ひとは,社会と繋がり,社会はひとと繋がっています。
ひとりのひとに問題を見出すよりも,それらに繋がるネットワーク全体を見つめて改善を図る方が合理的な解決に結びつきやすいのではないでしょうか。

もし世界に自分ひとりしかいないとすれば社会は形成されず,人間関係も生まれません。比較するものがなければ自分の考えは唯一のものであって,正しさとか,価値があるとかないとか,そういう疑問が生まれることはないでしょう。

行動や感情も人間関係の中においてこそ生まれるものです。
うれしかったり,悲しかったり,辛かったりも,自分一人で感じることはきっとできないでしょう。

世界に自分がひとりで寂しいという気持ちでさえ,元々ひとりであって,そうでない状況との比較がなければ,友だちという存在がなく,友だちがそばにいてくれないという概念すらなければ,それで寂しい気持ちを感じることはたぶんないんでしょうね。

悩みとなればなおさらです。

会社に対して腹を立てること。
社会問題に対して憤りを感じること。
チームリーダーではなくて,チームの方針に違和感を覚えること。

これらにも対象と目的をもった行動があるだろうと考えます。
決してひとりで,誰に対するでもなく,行動することはありません。

このように

「誰に対して,どのような目的をもって行われた行動なのか」を考えると,仕事の悩みどころか,すべての悩みが人間関係に起因すると言えるかもしれません

一は全,全は一。
ひとは,社会と繋がり,社会はひとと繋がっています。
ひとりのひとに問題を見出すよりも,それらに繋がるネットワーク全体を見つめて改善を図る方が合理的な解決に結びつきやすいのではないでしょうか。