部下や後輩の指導に向いていないと思った人に知って欲しいこと。#7

第7回目の今日は,次のスキルにすすんでいきたいとおもいます。
次にお話しするのは「認める」スキルです。

ひとは自分の存在を認めてもらっていると安心できるんですね。
安心して自分のことを話すことができますし,自分の成長を見守ってくれているという信頼感にもつながります。さらに不思議なことに自分を認めてくれるひとがいると,自分自身を信頼する気持ちが湧いてくるのです。私は大丈夫なんだってなんとなく思えてしまう不思議なチカラです。

さて,承認する,認める,というのは傾聴に連動しています。
話をしっかりと聴いてもらえているというのは,すなわち認めてもらっていることも意味しますから,まずは傾聴に努めることはやっぱり大事です。

たとえば興味がないとか,馬が合わないなーと感じているとか,今は忙しいから関わりたくないとか思っているときは傾聴することはできませんから,どうしてもおざなりな返事になってしまったり,早々に会話を打ち切ろうとしたりしてしまいますが,これはすなわちそのひとの存在そのものを認めていないことになるのですね。

向かい合うそのひとの存在をしっかりと認め,承認するということは,そのひとが確かにそこにいて,私にとってとても大切なひとであり,そのひととの対話の時間もかけがえのない時間なのですよということを体現する,これが認めるという行為でもあります。

承認する

さて,承認するというスキル,技術的には

「相手の意見や考えを,ありのままに認める」ということになります。

認めるというと,「OK,それでいいよ!その考えを許可する!」というイメージをもってしまうかもしれませんが,許可するとか,不許可にするとか,そういうジャッジではありません。

むしろ一切のジャッジはしません。

いかなる考え方でも,そういう考え方,想い,感じ方,であるということをなるほどと受け入れることです。

善悪のジャッジはもちろん,私と同じ趣味であるとか,私と近い考えであるとか,逆にそうでないから理解が難しいとか,そういうジャッジをすべて排除して,クライエントの言葉をそのまま受け止めることをいいます。

その効果は

  1. 心理的安全性を高める
  2. 自信をもってアイディアを言語化できる
  3. 自己肯定的に前進できる

など,クライエントに勇気を与えることができます。

クライエント自信の目標達成や能力向上をフォローアップしていくうえで,クライエントの中にある意見や考え方を反映させることはモチベーションの源泉になります。

また,納得感,腹落ち感も得られやすいとも言えます。

ひとは基本的に,他者からのアドバイス,助言には首を縦に振りません。どれほど成功事例の多いセオリーだとしても,どれほど独自に考え抜かれた理論だとしても,それを即座に「はいわかりましたやってみます」とはなりにくいものです。

コーチが100%クライエントの味方であり,クライエントの意志を尊重してくれる仲間であることをしっかりと認識し,信頼関係を築いてもらえるまで,こういったアドバイスは機能しませんから,まずはクライエントの考え方を100%理解できるように努めることが先決です。

そのためには,相手の話をしっかりと承認することが大切です。

それではコーチの考えや,好みに反するような意見をどう受け止めたらよいのでしょうか。

一番気をつけなくてはいけないのは善悪で捉えることです。

相手の意見は駄目で,私の意見のとおりに行動すれば成功するのだ,というストロング型リーダーシップでは,信頼関係はできません。強制的にそうさせるのでは意味がないのです。

強制性は短期的な効果はあがるかもしれませんが,我々がやろうとしているのは中長期的に,持続的に効果をうむようなコーチングです。

そのためにはクライエントは自発的,内発的動機に基づいてトレーニングを開始しなくてはなりません。自分の内側からうまれる内発的な動機には,給料アップや賞罰のような外発的動機,衛生要因と異なり,自立的に成長していく動機ができあがる効果があると言われています。

何事も,自分でやろうと決めなくては,本当に成長することはできないのです。

だからこそ,クライエントが考えたことを肯定的に受け止めること,承認するということは彼らのモチベーションを支える大事な行為となります。このコーチといっしょならがんばれると思ってもらえるように,彼らの意志を尊重すること,善悪のジャッジはせずに,ただその考えを受け入れること。

元より,考えがそこにあることを否定することは誰にも出来ません。

そのような考えなのだ,ということを,そんなことはないと否定したところで,何の意味もないことをしっかりと理解しましょう。