仕事を辞めたいなーと思っているひとへ

悩み

本稿は以前に書いたものの焼き直しです。
キャリアコンサルティングとは関係のない文脈で書いたものだったのですが,趣旨はタイトル通り「仕事辞めたいなー」と考えているひと向けのものなので,少し手を入れて再掲します。

仕事を辞めたいと思ったときに考えておくこと。

僕は元国家公務員です。
45歳の年度末で辞めました。

理由はたくさんありますが,後から思うとものすごい絶妙なタイミングでいろんなものが「今だ!」と背中を押してくれるように重なったからです。

ミヒャエル・エンデ著『モモ』の中で時間を司るマスターが”星の時間”という不思議な時間について語っています。
「自」という漢字の二通りの読み方,ご存じだと思います。
みずから”動く能動的なタイミングと,”おのず”と動く受動的なタイミングが重なったその瞬間が”星の時間”です。

まさしくこの”星の時間”が僕に訪れたのです。
本当に自然に,迷うことなく,退職に踏み切りました。

考えておいたほうがいいこと(1)

まず気になるのはお金の話ですよね。
当時,年収で言うと700万ぐらいもらっていました。だから,単純計算して,何事もなく定年まで働けば額面7000万ぐらいはもらえたはずなので,独立起業して,引退するまでの間にすくなくとも7000万以上の収入をあげなくては,辞めた甲斐はありません。

もちろん,お金以外にも得るものはあることは承知してますが,まぁわかりやすい指標として収入を用いれば自分を納得させやすいと思っています。

楽しいけれど赤字なんだよね。

では,僕は良くても,僕のわがままをきいてくれた妻や子どもたちに顔見せできません。

これは間違いなく考えておいたほうがいいことの筆頭です。

ポイントは具体的に考えるということです。
自分はその点についてはめっちゃ考えた!というひとでも,案外突っ込んでいくとそれほど具体じゃないことはたくさん(ホントにたくさん)あります。

だから,必ず他の誰か,とりわけ冷静に見てもらえるひとに相談しましょう。

妻や子どもたちとした相談

僕が仕事を辞めるにあたっては,当然ですが妻と子どもたちと相談をしました。

最初に妻から,これから起こす事業について数字を使ってしっかり説明しろ,と言われました。最低限,シビアに採算がとれるのかどうか,とれるとすればどれぐらいの時間が必要なのか,その間の生活をどうするのか,そういう現実的な話を根拠立てて話ができなければ検討に値しないというわけです。


それで僕は一通り資料をつくって,プレゼンしました。
事業計画は綿密に立てました。
それなりに説得力のあるプレゼンだったと思います。
けれども,これはあとから妻にきいた話なのですが,どうやら彼女は僕のメンタルを気遣ってくれていたようで,ストレス抱えて残り10年勤めるよりは,元気な内に死ぬまでできる仕事を探したほうがいいかもという想いもあったのだそうです。

確かにあの頃は気が滅入っていて,いろいろ人生の問題も抱えて,仕事もストレスフルで,嫌だなーと思っていたのは間違いないです。

考えておいたほうがいいこと(2)

自分はいったい何に大きな価値を置いているのかを再考することです。再考というとめんどくさそうですが,転職って毎月行うものでもないし,頻繁に起きるイベントでも本来ならないものです。

たとえば,今の仕事がストレスになることがあるとすれば,それは何かしら自身の価値観に触れているからです。

僕が抱えていたストレスは自分のいちばん大事なところが時折無視されるところにありました。
今は仕事辞めて1年半たちましたが,ストレスレスで快適です。

もちろん新しい仕事はあらゆることを自分で決断しなくてはなりませんし,うまくいかなければ結果はすべて自分にかえってくる怖さがあります。
事業としての問題や課題は山盛り抱えています。中には本当に難しい課題もありますし,理想と現実が交錯してモヤモヤすることだってあります。けれども,少なくとも信念に反するストレスを抱えることはありません。

矜恃に反して,無駄にエネルギーを費やすこともなくなりました。
大きな職場にありがちなストレスはゼロです。

自分がおかしいと思いながら,目の前で困っているひとをさらに困らせるような仕事はしなくて済むようになったのですから,これだけは本当に辞めてよかったと思います。

心の底からそう思います。

もしもあなたが本気で仕事をしたいと思っていて,今の職場でその夢が見られないと感じることがあれば,そのことについてしっかりと向き合ってほしいと思います。

必ずしも独立して開業する必要はありませんし,すぐに仕事を辞める必要もありませんが,なるべく早いタイミングで,そのことを誰かと話して下さい。できれば僕たちキャリアコンサルタントに相談してみてください。

相談というと何かを解決するための対話のようですが,解決するとかしないとかはとりあえずどちらでもよくて,そのモヤモヤを抱えたままにしておくことがもしかしたら生産性を損なう原因になっているかもしれないからです。

考えておいた方がいいこと(3)

これも考えておいたほうがいいことの筆頭候補ですが,仕事を辞めることが手段ではなくて,目的になっていないだろうか?ということを何度もチェックして欲しいです。

仕事を辞めるにあたっては,なぜ仕事を辞めたいのかを考えて決断するよりも,何か別のものをトリガーにして欲しいと思います。もしもそうでなく仕事を辞めたい理由がいくつも並んでしまって,その理由を解消することが仕事を辞める直接の目的になるようなら,やはり前述したとおりその原因としっかり向きあってください。

仕事を辞めることが目的となっている間は,たぶん辞めてもうまくいきません。

原因としっかり対峙して,昇華されたとき,仕事を辞めることは目的から手段になっているはずです。

たとえばキッカケは

現職が嫌だから辞めたい
人間関係が辛いから辞めたい

でも構いません。

その代わり,現職が嫌だからという理由としっかり向き合って,どんなところに問題を感じているのか,どうなったらいいのか,自分はどう在りたいのかを言語化し,書き出し,そのためにはどうしたらよいのか?についてロードマップを描きましょう。

人間関係が辛いから辞めたい場合でも同様です。
人間関係が辛いと思うのは,どのようなところからそう感じるのか,とりわけ誰を対象としているのか,そのひととの関わりにどのような問題があるのかなど,自分としっかりと相談して欲しいと思います。

そのうえで,仕事をする目的をはっきりと意識し,その結果辞めることが最良の選択肢であれば,理由がネガティブなものでも構わないと僕は思っています。

多くの場合,「これらの理由で辞めたい」からスタートすると,最適解が退職にはならずに,異なる方法で解決していく方がスマートだということに気が付きます。これらを解決する方法は「辞める」以外にもたくさんあるから,とりあえずやれることをやってみようか,というあたりに落ち着きます。

ただしもしも,あなたがこのような「現職の条件や人間関係」を理由にした辞職や転職を2度3度繰り返しているようなら,一番時間を割くべきは「自分との対峙」です。同様な問題や課題が繰り返されるとすれば,その問題や課題はあなたの中にあり,未だ解決できていない証左です。

そういう方はぜひとも一度,自分を変化向上させるという覚悟をもってキャリアコンサルティングを受けてみて欲しいです。

まとめ

お金の算段さえしっかり立てておけば,しばらくは時間をかけて自分のキャリアについて見つめ直すこともできます。

退職を考えつつ,現職についているうちにそれらをこっそり実行するのがいちばん良いと思います。でももしも自分の身に危険を感じるほどに現職が辛いのなら,飛び出してしまってもよいかもしれません。

ただし,精神的なバランスを崩しているときは大事な決断はしてはいけません。自分はいたって冷静だ!と思っていても,そうでないことがよくあります。そういうときに大事な決断をするとあとから失敗したなーと後悔する可能性が高まります。

可能であれば休職などを考えつつ,心と体をゆっくりと休めてから,冷静に判断しましょう。

仕事のことを考えるときは,ひとりで考えない。
誰かに相談。
これがうまくやる秘訣です。